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北京ではがれ落ちた中国への偏見(訪問レポート)
 今回のBFP初・中国ツアーで私自身が得たもの、それは紛れもなく中国という国に対する色眼鏡をはずすという、日本にいてはなかなか果たせなかったであろう感覚でした。BFPという組織を作り、ここ7年はフィリピンの方々と向き合う中で、相手を「知らない」ということが互いの距離を広げてしまうことがあるし、誤解を生みやすくしてしまうと感じてはいました。まだ訪問した事のなかった中国についても、マスコミを通して得る情報とは違う側面があるという事を頭では理解していたつもりです。しかし、百聞は一見にしかず。

 滞在中、自分の中にあった偏見が、バリバリと音を立てて剥がれていくのを感じました。そして想像をはるかに上回る冷静な中国人の対応に、考えさせられる事が多々ありました。このレポートでは、具体的なそれらのエピソードを紹介すると同時に、さらに掘り下げて、そこから見えてくる問題について見据えてみたいと思います。

 言うまでもなく、BFPの中国プロジェクトの第一歩としては、良い一歩を踏めたと感じています。ツアーにご参加くださった会員の皆さま、コーディネートを担当してくれた熱田さん、ツアーの成功を見守っていてくださった皆さま、本当にありがとうございました。そして、BFP中国プロジェクトの実現を可能にしてくださったアジア・コミュニティ・トラストの皆さま、心より御礼申し上げます。

1.素顔の中国人の日常
2.日本のテレビには流れない、中国人の懐の深さ
3.「歴史について語りたくない」という中国の若者達の真意
4.中国への風当たりが強い背景をしっかり捉える必要性


1.素顔の中国人の日常

 まず、到着直後から新鮮に感じたのは、素顔の中国人の様子です。初めて中国を訪問した私の中には、反日デモに参加する中国人の様相が知らず知らず脳裏に焼きついていたのでしょう。ニコニコと話しかけてくるホテルのベルボーイに好感を持ち、鼻歌を歌いながら町を歩いている若者を驚きをもって凝視している自分がいました。考えれば当たり前の事ですが、それ程までに自分の中に偏見があったことに改めて気づかされ、そんな自分にもハッとさせられました。

 その後も、私の中の驚きは、心地よい中国理解へと次々に繋がっていきました。町を歩いていると、どこからともなく歌声や音楽が聞こえてくる事が多々ありました。大抵は公園の中から聞こえてくるものでした。老若男女が集い、歌や踊りを楽しむ姿がそこにはありました。

 そして地下鉄に乗ろうとした時のこと。既に沢山の乗客が車内にいて、乗り込むのが大変な程です。目的駅に着いた時も、人をかき分けて降りるのは、それはそれは骨の折れる事でした。でも逆に考えれば、人口13億人以上の人が住む中国、ましてや首都の北京において、自分を強く持たないと生きていかれないのが分かる気もしました。日本にいると、中国人の図々しさを指摘する声を耳にすることもありましたが、実際その地に立つと、その背景がよく分かったような気がしました。
 

2.日本のテレビには流れない、中国人の懐の深さ

 次に印象深かったのは、中国人の懐の深さでした。中国に住んでいた経験のある元日本兵からは聞いていた事ではありましたが、腑に落ちていない自分がいました。しかし、今回盧溝橋にある抗日記念館を訪ねた際、その事がストンと理解できたように思いました。

 その記念館は、名称の通り日本軍に抵抗した歴史を展示している博物館です。最初の展示部屋は満州事変の状況が解説され、抗日を宣言する様子がドラマチックに描かれています。中ほどには南京虐殺に関するパネルもありましたが、聞いていたよりはトーンを落とした、随分と冷静な展示だと感じました。

 そして最後の展示部屋には、日中国交正常化など日中友好をテーマにした部屋が設けられていたのです。全く想像していなかった展開でしたので、度肝を抜かれました。日本では、いかに中国政府が反日教育をしているか、という事ばかりが言及されますが、実際はその逆の事が行われていると言えるでしょう。

 他にも同じような印象を受ける事がありました。日本軍の憲兵隊本部だったという新文化運動記念館(旧北京大学紅楼)を訪ねた時のことです。その記述がどこにも見受けられなかったので解説員の方に伺ったところ、「自分はもちろんその事実を知っていますが、今、正確な根拠に基づいて話をすることができません。言えばそれは推測です。こうした敏感な問題については、具体的な事実に基づいて話さなければなりませんし、推測で曖昧な話をすることはあってはなりません。日本軍関連のお話の解説がご希望でしたら、事前に解説のリクエストをお願いします」」という回答を頂きました。事を荒立てるのではなく、不確かなことは説明しないというその姿勢に感銘を受けました。

3.「歴史について語りたくない」という中国の若者達の真意

 そして、最後に私自身が意外に感じたのは、交流させて頂いた数人の中国の若者から「日本人とは、歴史について語りたくない」という言葉が出たことです。日本にいると、歴史問題について中国人から責められるのではないか、という意識ばかりが働いていたように思います。ですから、私はいつそのような機会が訪れるかと待っていたようなところがありました。でも実際はその逆で、あまり語りたくないという姿勢が見受けられました。勿論、1週間という短い滞在の中で、交流した人数が限られる中、この印象が全てであるとは思っていません。

 しかし、こう発言した彼らの口から、続いて出た言葉がさらに印象的でした。「日本人と歴史の話をして、お互いに嫌な気持ちになりたくない」「事を荒立てたくない」という事でした。日本人への配慮が見られるこの対応に、びくびく怯えているのは日本人側だという気がしてなりませんでした。

 BFPは設立当初から、元日本兵の想いをビデオメッセージとして被害国へ届け、懸け橋を築くということを目的としてきました。私自身、こんな事をして一体何になるのだろう、という不安を抱えていなかったと言えば嘘になります。でも、私の中には、対話を避けていては新しい関係は築けないのではないか、という確信に近い想いがありました。

 今回も「本当は歴史について話さないようにしている」という20代後半の方とも意見交換をする機会がありました。その彼から、帰国後すぐにメールが届いたことに希望を感じましたし、別の中国人の方からは「歴史問題は避けるのではなく、互いに真摯な気持ちを伝えることこそがどれほど大事なのかを初めて痛感しました」というメールを頂きました。当然のことながら、配慮は今後も十分にしていかなければと思っていますが、BFPの中国プロジェクトはこれから実施していく上で、状況を把握するという点においては、良い交流ができたと感じています。


4.中国への風当たりが強い背景をしっかり捉える必要性

 以上、3つの視点から中国で受けた印象をまとめましたが、これらの事から強く感じたのは、日本側の抱える問題です。つまり、中国への風当たりが強い背景をしっかり捉える必要性があるという事です。

 中国では日本の原宿と同じような若者の町があり、お洒落で洗練されたファッションを楽しむ姿がありました。一方、日本で報道されるのは遅れた中国、という側面が圧倒的に多いように思います。この事は、一体何を示しているのでしょうか。

 知らず知らずのうちに、過去の出来事に対する後ろめたさがひねた形で現れているのかもしれません。成長を遂げている隣国に対する、ライバル意識が見え隠れしているのかもしれません。

 それ以上に私自身が恐れるのは、中国と日本が良好な関係を築き、結託する事を恐れる国際関係が存在するという事です。ここでは深く掘り下げませんが、このような覇権争いともとれるバランスが戦争を引き起こしてきたことを見逃してはならないと思います。単なる中国嫌いという事よりも、そのネガティブな感情を利用する人々がいるという事を、私達は忘れてはならないのではないでしょうか。

 帰国後にお邪魔した日本での上映会で、「争いのない社会は求めたいけれど、尖閣諸島の問題など、相手が力づくで襲ってくる場合はどうしたらいいか混乱しています」と声を掛けられました。

 草の根で交流を広げていけば、それ程大きな溝がない事に気づきます。でも相手を知らないと、不安に駆られ、恐怖心が募ります。

 第二次世界大戦を思い返す時、当事者だった多くの方々が「洗脳されていた」「マインドコントロールがあった」とおっしゃいます。大きな渦に飲み込まれず、冷静に判断する視点が求められていると思います。その為に出来ることを、BFPとして今後も続けていきたいという思いを、改めて強くするツアーとなりました。

 今後、毎年ツアーの開催を予定しています。皆さまのご参加をお待ちしています。
(余談:中華料理は、どこもとっても美味しかったです!)

| 中国訪問レポート | 19:19 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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