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元日本兵取材報告 樺太
 「幸運にも私はシベリア送りにならずに済みました。元兵隊であることがバレてソ連兵が家に来てからは1年間逃げ続けました」。何とも耳を疑うような話を平気な顔をして話すKさんは、樺太で育ち、日本兵になりました。


 1921(大正10)年730日生まれのKさん(95歳)は、東京都深川区で生まれました。大工をしていた父親が、景気の良さを聞き、昭和元年に親子3人で樺太の元柏郡知取町に移り住みました。


 知取町の尋常小学校を卒業したKさんは、日雇いの肉体労働の職に就き、11年間の労働生活を樺太で送りました。

  

 22歳の誕生日を迎える約1カ月前の1943(昭和18)年6月、赤紙が届きました。臨時召集でした。「とうとう来たか。しょうがない」という気持ちでした。


 Kさんは、宗谷要塞重砲兵連隊第2中隊に配属され、通信兵として活動しました。重さ30キロほどの通信機を担ぎ、山の中を走り回ったといいます。

  

 樺太では、地上の戦闘行為はありませんでした。戦闘といえば、「付近の近海を潜行していたソ連軍の潜水艦1隻を日本軍が沈めたことぐらい」でした。その1隻を沈めた後は、みなで酒を飲んで祝ったそうです。

 

 終戦が、Kさんたち宗谷要塞重砲兵連隊第2中隊の運命の分かれ目になりました。Kさんの中隊には、樺太出身者と内地から来た人が混じっていました。終戦を迎えてに帰ろうと樺太の港に向かった日本兵のほとんどがソ連軍の捕虜になり、強制労働の苦役を負わされることになりました。

 

  Kさんが所属していた通信班は20人で構成され、うち樺太出身者は3人いました。その全員がソ連軍に連行されました。

 

 通信班のKさんたち樺太出身者17人は、すぐに軍服を脱いで平服に着替え、地元での暮らしに戻りました。Kさんは終戦を知らせる天皇の詔勅を聞き、「ああこれで命が助かった。家に帰れる」と胸を撫で下ろしました。このように、日本兵としての身分を隠すことができたため、捕虜にならずに済みました。

 

 Kさんが戦後聞いた話では、ソ連での強制労働送りになった戦友たちの中には、精神的に不安定になった古参兵や帰国後に「アカ」と呼ばれ、仕事に就けなかった人もいたそうです。

 

 Kさんは戦後、樺太にあった王子製紙事務所の倉庫で、ソ連軍の指揮の下、ボイラーの石炭降ろしの仕事をしました。しかし、数ヵ月後には、元兵隊であることがソ連軍に知られてしまいました。ソ連兵はKさんを連行するため、家にまで来ましたが、Kさんは終戦から3カ月後に結婚した妻の家や友人の家などを1年間転々としてソ連兵の手から逃げました。Kさんは当時のことを「運良く捕虜にならずに済みましたよ」と笑い話のように思い返しました。

 

 終戦を迎えた後、Kさんの所属していた通信班20人の方たちは、Kさん以外全員病気でお亡くなりになったといいます。唯一手紙で連絡を取っていた中隊長の方も、4年前に他界されました。

 

 「何が何でも生きていこうという気持ち」で戦後を生き抜いてきました。上等兵として終戦を迎えたKさんは、1948(昭和23)年に樺太から千葉県木更津市に移り住みます。その後7年間、駐留米軍基地の航空部品補給所で勤務した後、朝鮮戦争が起きた1954年ごろから定年を迎えるまで、同じく千葉県の海上自衛隊の物品管制の事務業務に就きました。

 

 Kさんは現在、93歳の奥様と2人で倉敷市に住んでいます。子どもが5人、孫が14人、ひ孫はなんと15人もいるそうです。「こないだ来たのはどこの子だったっけ」「さあ分からない」。こんな会話もありました。

 

篠塚辰徳

| 元日本兵インタビュー&交流 | 02:23 | comments(0) | - | pookmark |
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